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品質管理2026/3/1713分で読めます

FMEAの進め方|故障モード影響解析の実践ガイド

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品質不良やクレームが発生してから対処する「事後対応」では、コストも時間も膨大にかかります。FMEAは「事前に」故障を予測し、対策を打つための体系的な手法です。製品設計や製造工程に潜むリスクを洗い出し、重大度・発生度・検出度の3軸で数値化することで、限られたリソースをどのリスクに集中させるべきかを客観的に判断できます。本記事では、FMEA実施の5ステップ、RPN計算、なぜなぜ分析との連携まで、製造現場の品質管理担当者が今日から使える実践的な内容を解説します。


1. FMEAとは――定義とDFMEA・PFMEAの違い

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、製品や工程に起こりうる「故障モード」を事前に洗い出し、その影響を評価して対策を講じる品質管理手法です。不良が発生してから原因を追う「事後分析」と対をなす「事前予防」のアプローチで、自動車・電機・医療機器など品質要求の高い産業で広く採用されています。

DFMEAとPFMEAの違い

FMEAには、主に2種類があります。

**DFMEA(Design FMEA:設計FMEA)**は、製品設計の段階で実施します。部品や材料の設計に潜む潜在的な故障モードを洗い出し、設計変更や安全余裕の確保などの対策を打ちます。「この部品が疲労破壊したら製品全体にどんな影響が出るか」といった視点で分析します。

**PFMEA(Process FMEA:工程FMEA)**は、製造・組立工程の設計段階で実施します。各工程ステップで発生しうる不良(寸法外れ、締め忘れ、混入など)を特定し、工程設計やポカヨケの改善につなげます。製造現場の品質管理で最もよく使われるのがPFMEAです。

AIAG-VDA FMEA ハンドブックと最新動向

自動車産業では、AIAGとVDAが2019年に共同発行した「AIAG-VDA FMEAハンドブック」が業界標準として広まっています。この改訂版では、従来の4段階から7ステップに拡張されました。「構造解析」「機能解析」「故障解析」という3つの前工程が追加されたことで、関係部門のナレッジを網羅的にFMEAへ反映できる仕組みになっています。

また、従来のRPN(リスク優先度数)に加え、重大度を最優先とした**AP(処置優先度)**の概念が導入されました。RPNは依然として実務で広く使われていますが、APの考え方――重大度が高い故障モードは発生度・検出度の数値にかかわらず優先的に対処する――は、日本の中小製造業の現場にも取り入れる価値があります。


2. FMEA実施の5ステップ

FMEAは大きく5つのステップで進めます。各ステップを順に踏むことで、抜け漏れのない分析ができます。

ステップ1: 対象の選定とスコープ設定

まず、分析対象とする製品・部品・工程の範囲を明確にします。FMEAは全体を一度に分析しようとすると膨大な作業量になるため、優先する対象を絞ることが重要です。

選定の目安は以下のとおりです。

  • 過去に不良・クレームが発生した製品・工程
  • 新規設計・工程変更があった部分
  • 法規制・安全規格への適合が求められる部位
  • 顧客からの品質要求が特に厳しい項目

FMEAのスコープが決まったら、機能要件と設計・工程の制約条件もあわせて整理しておきます。

ステップ2: 故障モードの特定

対象とした製品・工程について、起こりうる「故障モード」を列挙します。故障モードとは、本来の機能が果たせなくなる状態のことです。PFMEAなら「寸法超過」「溶接強度不足」「取り付け忘れ」「異物混入」などが典型例です。

このステップでは、過去の不良履歴や顧客クレーム記録、作業手順書の確認が役立ちます。ベテラン作業者の経験知を取り込むため、担当者だけでなく製造・設計・品質・生産技術のメンバーでチームを組んで実施することをおすすめします。

ステップ3: 影響分析と原因の特定

特定した故障モードが発生した場合の「影響」と、その故障モードを引き起こす「原因」を両方向から分析します。

  • 影響(上流分析): 故障モードが製品・工程・最終顧客にどんな悪影響を与えるか
  • 原因(下流分析): 故障モードが発生するメカニズム・要因は何か

原因分析には4M(Man/Machine/Material/Method)や5M1Eフレームワークを活用すると、見落としを防ぎやすくなります。また、現在どのような予防管理(検査・ポカヨケなど)が機能しているかも記録します。

ステップ4: RPN(リスク優先度数)の算出

故障モードごとにリスクを数値化します。RPN=厳しさ(S)×発生度(O)×検出度(D)で計算し、リスクの大きさを比較可能にします(詳細は次のセクションで解説します)。

ステップ5: 対策の立案と実施

RPNが高い(またはAPが「H:高」の)故障モードを優先し、具体的な改善策を立案します。対策は「発生防止策」と「検出向上策」の2種類があります。

対策の種類 内容
発生防止策 故障モードが起きないようにする ポカヨケ設置、工程設計の変更、作業手順の標準化
検出向上策 故障モードが発生した場合に検出できるようにする 検査頻度の増加、計測器の精度向上、センサー追加

長期的には「発生防止策」を優先する方が根本的な品質向上につながります。対策を立案したら、担当者・完了期限・改善後のRPN目標値を記録し、進捗を管理します。


3. RPNの計算方法――厳しさ×発生度×検出度のスコアリング

RPN(Risk Priority Number:リスク優先度数)は、故障モードのリスクを1〜1,000の数値で表す指標です。

RPN = 厳しさ(S)× 発生度(O)× 検出度(D)

各評価項目は1〜10のスケールで採点します。

厳しさ(Severity:S)

故障モードが影響を与えた場合の「深刻さ」を評価します。

スコア 評価基準
9〜10 安全・法規制に影響するリスク 人体への危険、法令違反
7〜8 製品の主要機能が失われる 製品が作動しない、重大な顧客不満
5〜6 性能低下・外観不良 機能の一部が低下、目立つ傷
3〜4 軽微な影響 わずかな性能低下、気づきにくい不良
1〜2 影響がほぼない 顧客がほとんど気づかない

発生度(Occurrence:O)

故障モードが発生する「頻度・確率」を評価します。

スコア 発生頻度の目安
9〜10 高頻度(1/10以上)
7〜8 繰り返し発生(1/20〜1/100)
5〜6 時折発生(1/500〜1/1,000)
3〜4 稀に発生(1/10,000〜1/100,000)
1〜2 ほぼ発生しない(1/1,000,000以下)

検出度(Detection:D)

故障モード・原因が顧客に届く前に「検出できる確率」を評価します。スコアが高いほど検出が難しいことを意味します。

スコア 検出能力
9〜10 検出手段がない or 見過ごす可能性が非常に高い
7〜8 現行管理では見落とす可能性が高い
5〜6 検出できることもあるが確実でない
3〜4 信頼性の高い検査・チェックが機能している
1〜2 確実に検出できる(ポカヨケ等)

RPNの活用例

たとえば、プレス工程の「バリ残留」という故障モードを評価した場合:

  • 厳しさ(S)= 6(次工程での傷の原因になる)
  • 発生度(O)= 4(月に数件発生している)
  • 検出度(D)= 5(目視検査だが漏れが出る)

RPN = 6 × 4 × 5 = 120

一般的にRPN 100以上は「要改善」、120以上は「優先対策」と判断するケースが多いです。ただし、厳しさ(S)が9〜10の故障モードは、RPNが低くても例外的に最優先で対処する運用が推奨されます(AIAG-VDA APの思想)。


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4. FMEAとなぜなぜ分析の連携――高RPNの故障モードを深掘り分析

FMEAはリスクの全体像を「広く・浅く」洗い出す手法ですが、個々の故障原因を「深く」掘り下げるのは得意ではありません。ここになぜなぜ分析(5Why分析)を組み合わせることで、FMEAを根本原因対策へとつなげることができます。

連携の流れ

  1. FMEAで高RPNの故障モードを特定する: RPNの高い上位3〜5件を「要重点分析」として抽出します。
  2. なぜなぜ分析で根本原因を特定する: 抽出した故障モードの「原因」欄に記載した要因に対して、「なぜそれが起きるのか」を4〜5回繰り返して掘り下げます。
  3. 根本原因に対して対策を立案する: 表面的な原因(「作業者の確認漏れ」など)ではなく、根本原因(「作業手順書に確認項目の記載がない」「照明が暗く目視確認が困難」など)に対する是正処置を立案します。
  4. FMEAに対策内容を反映し、RPNを再評価する: 対策実施後の厳しさ・発生度・検出度を再スコアリングし、RPNが目標値まで改善されたか確認します。

連携のメリット

FMEAとなぜなぜ分析を切り離して運用している現場では、FMEAで「バリ残留」をリストアップしても、対策が「目視検査の強化」という検出依存の対策に終わりがちです。なぜなぜ分析で「なぜバリが発生するのか」を掘り下げると、「金型の摩耗管理ルールが整備されていない」という根本原因にたどり着き、発生度そのものを下げる対策(金型交換周期の設定)が生まれます。

発生を減らす対策は検出を強化するより効果が持続し、コストも長期的に低くなります。FMEAの優先リストとなぜなぜ分析のセットは、品質改善の費用対効果を高める組み合わせです。


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5. FMEA表のテンプレートと記入例

FMEA表は、以下の列構成が基本です。

列番号 項目名 記入内容
1 工程番号/部品番号 対象の工程・部品の識別コード
2 工程名/機能 工程の名称(例:溶接、組立、検査)
3 故障モード 起こりうる不良・故障の状態
4 影響 故障モードが与える悪影響
5 厳しさ(S) 1〜10で採点
6 原因/メカニズム 故障モードを引き起こす要因
7 発生度(O) 1〜10で採点
8 現行管理(予防) 原因の発生を防ぐ現在の管理策
9 現行管理(検出) 故障モードを検出する現在の管理策
10 検出度(D) 1〜10で採点
11 RPN S × O × D の計算値
12 改善対策 優先対策の内容
13 担当者・完了期限 対策の実施責任者と期限
14 改善後S/O/D/RPN 対策実施後の再評価値

記入例(プレス加工工程のPFMEA)

工程名 故障モード 影響 S 原因 O 現行管理(検出) D RPN 改善対策
プレス成形 バリ残留 次工程での傷、組立不良 6 金型摩耗 4 目視検査(全数) 5 120 金型交換周期の設定・管理台帳整備
プレス成形 寸法外れ(穴径過小) 締結不良・機能不全 8 プレス圧力設定のばらつき 3 抜取り寸法検査 4 96 圧力センサーによるリアルタイム監視
組付け ボルト締め忘れ 製品の脱落・安全事故リスク 9 作業順序の確認なし 2 工程完了チェックリスト 6 108 ポカヨケ(締め付けトルク管理機器の導入)

この例では、「ボルト締め忘れ」の厳しさ(S)が9であるため、RPN(108)が「バリ残留」(120)より低くても優先的に対策を講じる判断が合理的です。AIAG-VDA APの考え方では、**S=9〜10の故障モードは最優先(H)**として扱います。

テンプレート運用のポイント

  • 評価基準を組織内で統一する: 担当者によってS/O/Dのスコアがばらつかないよう、評価基準表をFMEA表に添付して共有します。
  • 定期的にFMEAを見直す: 設計変更・工程変更・クレーム発生時には必ずFMEAを更新します。「作ったら終わり」では実効性がありません。
  • 対策の進捗を追跡する: 改善対策の担当者・期限・完了ステータスを記録し、未着手のまま放置されないよう管理します。

まとめ

FMEAは品質不良を「起きてから対処する」から「起きる前に予防する」へ転換するための核心的な手法です。

本記事で解説した内容を整理します。

  1. FMEAとは: 製品・工程に潜む故障モードを事前に洗い出し、リスクを評価して対策を打つ手法。DFMEAは設計段階、PFMEAは工程設計段階で実施する。
  2. 5ステップ: 対象選定 → 故障モード特定 → 影響・原因分析 → RPN算出 → 対策立案・実施。
  3. RPNの計算: 厳しさ(S)× 発生度(O)× 検出度(D)で1〜1,000の数値化。RPNが高いほど優先対策が必要。S=9〜10は例外的に最優先。
  4. なぜなぜ分析との連携: FMEAで高RPNの故障モードを特定し、なぜなぜ分析で根本原因まで掘り下げることで、対症療法でなく根本対策が可能になる。
  5. FMEA表の活用: テンプレートを組織内で統一し、設計・工程変更のたびに更新・見直すことが品質マネジメントの継続的改善につながる。

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よくある質問(FAQ)

Q1. FMEAは製造業以外でも使えますか?

FMEAはもともと軍事・航空宇宙産業で発展し、現在は自動車・医療機器・食品・ソフトウェア開発など幅広い分野で活用されています。「潜在的な失敗を事前に特定してリスクを下げる」という考え方はあらゆる業種に応用可能です。

Q2. RPNの閾値(しきい値)はいくつに設定すればよいですか?

業界・製品特性・リスク許容度によって異なりますが、国内製造現場では「100以上を要改善」「125以上を最優先」とする運用が一般的です。ただしAIAG-VDAが提唱するとおり、厳しさ(S)が9〜10の故障モードはRPN値にかかわらず最優先で対処する原則を設けることをおすすめします。

Q3. FMEAとFTA(故障の木解析)はどう使い分ければよいですか?

FMEAは「どんな故障が起きうるか」を底辺から上に積み上げるボトムアップ分析で、工程・製品全体の網羅的なリスク洗い出しに適しています。FTA(Fault Tree Analysis)は「特定の望まない事象(トップ事象)がなぜ起きるか」をトップダウンで掘り下げる手法で、重大事故のメカニズム解明や複合原因の分析に向いています。FMEAでリスクを広く把握し、重大な故障モードにはFTAで深掘りするという連携が効果的です。

Q4. 少人数の品質部門でFMEAを効率的に進めるには?

対象を「顧客影響が大きい工程・部品」「変更が加わった箇所」に絞り、スコープを限定することが最初の一手です。また、既存のFMEA表をベースに差分だけ更新する「フォローアップFMEA」の仕組みを作ることで、ゼロから作成する工数を大幅に削減できます。デジタルツールで過去の分析結果を検索・再利用できる環境を整えるとさらに効率化されます。

Q5. なぜなぜ分析とFMEAはどのタイミングで組み合わせるべきですか?

FMEAは設計・工程設計の初期段階(事前)に実施し、なぜなぜ分析は実際に不良・事故が発生した際(事後)に実施するのが基本的な使い分けです。ただし、FMEAで高RPNとなった故障モードの「原因」欄に書いた要因をさらに深掘りするため、なぜなぜ分析を事前分析として組み合わせる運用も有効です。どちらの場合も、分析結果をFMEA表に反映して組織のナレッジとして記録・蓄積することが重要です。


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