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品質管理2026/3/1714分で読めます

CAPA(是正処置・予防処置)の書き方|FDA/ISO対応の実務ガイド

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品質不良が再発するたびに「また同じ問題か」と感じたことはないでしょうか。対症療法的な修正を繰り返しても、根本的な仕組みを変えなければ問題はなくなりません。CAPAは「繰り返さない仕組み」を作るための品質ツールです。問題を特定し、根本原因を分析し、再発防止策を組織のプロセスへ組み込む――このサイクルを確立することがCAPAの本質です。FDA規制対応の製造業でも、ISO認証を維持する工場でも、CAPAは品質マネジメントシステムの根幹を担います。本記事では、CAPAの定義から具体的な書き方、ISO/FDA要求事項への対応、デジタル管理の活用まで、実務に直結する内容を解説します。


1. CAPAとは――是正処置(CA)と予防処置(PA)の定義と違い

CAPA(Corrective Action and Preventive Action)は、日本語で「是正処置・予防処置」と訳される品質管理の仕組みです。製品・プロセス上の問題を特定し、その根本原因を除去することで再発・未然防止を図ります。

是正処置(Corrective Action)とは

是正処置は、すでに発生した不適合・問題に対して、再発を防ぐための処置です。重要なのは「修正(Correction)」との違いです。修正は目の前の不良品を廃棄・手直しする直接的な対処であり、是正処置は「なぜその不良が起きたか」という根本原因を除去する処置を指します。

たとえば、出荷検査で規格外の製品が見つかった場合、その製品を廃棄するのが「修正」です。一方、なぜ規格外品が発生したのかを分析し、検査手順の見直しや設備の調整など再発を防ぐための処置が「是正処置」にあたります。

予防処置(Preventive Action)とは

予防処置は、まだ発生していない潜在的な問題を事前に防ぐための処置です。過去のデータ、監査結果、リスク分析などの情報をもとに問題発生の可能性を予測し、事前に手を打ちます。是正処置が「事後の再発防止」であるのに対し、予防処置は「事前の未然防止」という性格を持ちます。

ISO 9001:2015における予防処置の位置づけ

注意すべき点として、ISO 9001:2015では「予防処置」という章立てが独立した項目として廃止されました。代わりに「リスクに基づく考え方(Risk-based thinking)」が規格全体に埋め込まれています。予防処置の概念がなくなったわけではなく、品質マネジメントシステム設計の根本的な考え方として組み込まれた、ということです。一方、ISO 13485(医療機器)ではISO 9001との違いとして、予防処置の要求事項(8.5.3)が引き続き独立して規定されています。


2. CAPAプロセス――問題識別から有効性確認まで5ステップ

CAPAは一連のプロセスとして体系的に進めることが重要です。手順をスキップしたり、途中で止まったりするCAPAは、形式的な記録に終わり実効性を持ちません。

ステップ1: 問題の識別

CAPAの起点は問題の識別です。CAPAを開始すべきインプット情報には以下のようなものがあります。

  • 内部品質監査での不適合の発見
  • 顧客クレーム・返品品の分析
  • 工程内不良・検査での規格外れ
  • ヒヤリハット・事故報告
  • 管理図・統計的工程管理(SPC)データの異常傾向

問題を識別したら、「何が」「いつ」「どこで」「どの程度」起きたかを事実として記録します。この段階での情報が不正確だと、後の原因分析が的外れになります。

ステップ2: 原因分析

CAPAプロセスの核心となるステップです。表面的な原因(作業ミス、確認不足など)にとどまらず、「なぜそのミスが起きたか」というシステム・仕組みレベルの根本原因を特定することが求められます。

原因分析手法としては、なぜなぜ分析(5Why分析)や特性要因図(フィッシュボーン図)が広く使われます。5M1Eフレームワーク(後述)を活用すると、原因探索の網羅性が高まります。FDAのCAPA規制でも「データ分析」「徹底的な調査」が明示されており、原因の深掘りが求められています。

ステップ3: 対策計画の立案

特定した根本原因に対して、具体的な是正処置・予防処置の計画を立てます。計画には以下の要素を盛り込みます。

  • 処置の具体的内容(何をするか)
  • 担当者(誰が実施するか)
  • 実施期限(いつまでに完了するか)
  • 影響を受けるプロセス・文書の確認(手順書改訂、教育訓練など)
  • 水平展開の対象(同じ原因が他の工程・製品にないか)

「担当者が曖昧」「期限が未設定」の対策計画は、実行されないまま放置されるリスクが高くなります。ISO 13485では、CAPAにタイムフレームの設定が明示的に要求されています。

ステップ4: 対策の実施

計画に基づき、是正処置・予防処置を実施します。手順書の改訂、設備の調整、ポカヨケの導入、教育訓練の実施など、根本原因に対応した処置を行います。

実施した内容はすべて記録に残します。「実施した」という事実だけでなく、「何を」「いつ」「誰が」「どのように」実施したかが確認できる記録が必要です。関係者への教育訓練を実施した場合は、その記録もCAPAフォームに紐づけて保管します。

ステップ5: 有効性の確認

是正処置・予防処置を実施したら、一定期間後に「処置が有効であったか」を確認します。不適合が再発していないか、根本原因が実際に除去されているかを検証し、結果を記録します。

有効性確認を省略したCAPAは、ISO/FDA審査で最も指摘されやすいポイントのひとつです。21 CFR Part 820(FDA品質システム規制)では、実施した変更の効果確認と、情報の管理層へのフィードバックが明示的に求められています。有効性確認期間は処置内容によって異なりますが、組織として合理的な基準を設け、運用することが重要です。


3. なぜなぜ分析の活用――CAPA原因分析フェーズでの5M1E活用例

CAPAの原因分析フェーズで最も重要なのは、「人のミス」で分析を止めないことです。「担当者の確認漏れ」「作業者の不注意」を根本原因とした是正処置は「注意するよう指導した」という再教育対策になりやすく、再発防止の実効性が低い傾向があります。

5M1Eで原因の視点を体系化する

なぜなぜ分析を始める前に、5M1Eフレームワークを使って「どの要素に原因の可能性があるか」を洗い出すと、分析の網羅性が高まります。

要素 英語 CAPAで確認すべき視点
Man スキル・知識・手順理解度・疲労・習熟度のばらつき
機械 Machine 設備精度・老朽化・メンテナンス状況・校正記録
材料 Material 原材料品質・仕様・ロット差・保管環境
方法 Method 作業手順の明確さ・標準化の程度・変更管理の運用
測定 Measurement 計測器の精度・校正状況・測定方法の妥当性
環境 Environment 温度・湿度・照明・騒音・清潔度

実際のなぜなぜ分析例(製造工程での不適合品流出)

問題: 検査で規格外品が次工程に流出した

ステップ 内容
なぜ1 検査担当者が規格外品を見逃した
なぜ2 検査チェックシートに当該寸法の確認項目が含まれていなかった
なぜ3 3か月前の設計変更時にチェックシートの改訂が行われなかった
なぜ4 設計変更時に連動して改訂すべき文書のリストが文書管理規程に定義されていなかった
根本原因 文書管理規程における設計変更連動の改訂ルールの欠如(方法・Methodの問題)

この例では、5M1Eの「方法(Method)」に原因が特定されました。是正処置は「文書管理規程に設計変更時の連動改訂リストを追加し、変更管理プロセスを明文化する」となります。これは「担当者を注意する」よりも実効性の高い再発防止策です。

水平展開への活用

根本原因が5M1Eのどの要素に属するか明確になると、「同じ方法(作業手順)を使っている他の工程」「同じ機械を使っている別の製品ライン」など、水平展開の対象を体系的に判断できます。ISO 9001条項10.2.1では「類似の不適合の有無確認(水平展開)」が要求されており、5M1Eはこの確認を効率化するための実践的な道具になります。


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4. ISO 9001/ISO 13485でのCAPA要求事項

ISO 9001:2015の要求事項(条項10.2)

ISO 9001:2015の条項10.2では、不適合発生時に組織が取るべき6つのアクションが規定されています。

  1. 不適合に対処し、必要に応じて修正・管理・結果への対処を行う
  2. 不適合の影響度を評価し、是正処置の必要性を判断する
  3. 根本原因を特定する
  4. 類似の不適合が他にないかを確認する(水平展開)
  5. 必要な是正処置を実施する
  6. 是正処置の有効性をレビューする

また条項10.2.2では、①不適合の性質および実施した処置、②是正処置の結果、の文書化した情報の保持が求められます。2015年版では是正処置の「手順書」作成は必須ではなくなりましたが、実施内容の記録は引き続き必要です。

ISO 13485:2016(医療機器)の要求事項

医療機器のQMSを対象とするISO 13485では、是正処置(8.5.2)と予防処置(8.5.3)がそれぞれ独立した条項として維持されています。ISO 9001と比べてより厳格な要求があり、特に以下の点が重要です。

  • タイムフレームの設定: CAPAの開始から完了までの期限管理が要求されている
  • 有効性確認の記録: 実施した是正処置・予防処置の有効性確認結果の文書化が必要
  • 潜在的なリスク評価: 予防処置では、規制要求事項・製品・プロセスへのリスク評価が求められる

日本の薬機法に基づくQMS省令(医機法)でも、第63条(是正措置)と第64条(予防措置)に対応する要求が規定されており、ISO 13485との整合が求められます。

FDAの要求事項(21 CFR Part 820.100)

FDA規制下の医療機器メーカーは、21 CFR Part 820.100に基づくCAPA手順の確立・維持が義務づけられています。主な要求事項は以下の通りです。

  • 品質データ(苦情、監査結果、返品、工程データ)の分析による既存・潜在的不適合原因の特定
  • 不適合の重大性・リスクに応じた調査の実施
  • 変更内容・手順の実施と記録
  • 品質問題に関する情報の責任者への周知
  • 管理者レビューへの関連情報の提供

FDAの査察でCAPA関連の指摘は常に上位を占めており、§820.100(a)だけで2008年〜2025年の間に4,085件の指摘が出ています。CAPA手順の不備、不十分な記録、調査の浅さが主な指摘理由です。


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WhyTrace Plus対策管理機能は、CAPAの担当者・期限・ステータスをワンプレイスで一元管理できます。AIによる根本原因分析(5Why/FTA)から対策の進捗追跡・有効性確認まで、ISO/FDA対応に必要なCAPAプロセスを効率化します。

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5. CAPA管理のデジタル化――ステータス追跡と期限管理の効率化

紙・Excelで管理する場合の課題

CAPAを紙の帳票やExcelで管理している現場では、以下の問題が起きやすくなります。

  • 有効性確認の失念: 対策を実施しても有効性確認の期限が来ても誰も動かない
  • 進捗が見えない: 誰がどの対策をどこまで進めているか一覧で把握できない
  • 期限切れの見落とし: 複数件のCAPAが並走すると、期限超過が発生しやすい
  • 記録の散逸: 紙の是正処置書がファイルに埋もれ、過去案件の参照が困難
  • 水平展開の抜け: 類似案件の検索ができず、同種問題の横展開確認が属人的になる

ISO 13485ではCAPAのタイムフレーム管理が要求されており、FDA査察でも「CAPAが期限内にクローズされているか」は確認ポイントのひとつです。

デジタル管理で実現できること

CAPAをデジタルツールで管理することで、以下の改善が期待できます。

ステータス管理の効率化 各CAPAに「問題識別」「原因分析中」「対策実施中」「有効性確認中」「完了」といったステータスを設定し、全件の進捗を一覧で確認できます。管理者は案件ごとに状況を把握でき、滞留しているCAPAにすぐ気づけます。

期限管理とリマインド 担当者と期限を登録することで、期限が近づいたアラートを自動送信できます。「対策を実施したが有効性確認を忘れていた」というFDA査察でよく見られる指摘を未然に防げます。

記録のトレーサビリティ 問題発生から原因分析、対策実施、有効性確認までの一連の記録を、ひとつのCAPAチケットに紐づけて管理できます。ISO/FDA審査で「この不適合に対してどのようなCAPAを実施したか」を問われたとき、即座に根拠を示せる状態になります。

類似案件の検索と水平展開 過去のCAPAデータをキーワード検索できると、「同じ原因による不適合が過去にもあったか」を確認し、水平展開の判断を効率化できます。

デジタルツール選定で確認すべきポイント

CAPAのデジタル管理ツールを選定する際は、以下の要件を確認することをおすすめします。

  • 担当者・期限・ステータスを一元管理できるか
  • 有効性確認期限のリマインド機能があるか
  • 根本原因分析(なぜなぜ分析)の記録と対策管理を連携できるか
  • ISO/FDA審査用の一覧出力・エクスポートができるか
  • 過去案件の全文検索ができるか

まとめ

CAPAは、品質問題を「今起きていることを直す」だけでなく、「二度と同じことが起きない仕組みを作る」ために設計されたプロセスです。

是正処置(CA)は「発生した不適合の根本原因を除去して再発を防ぐ」、予防処置(PA)は「潜在的なリスクを事前に特定して未然防止を図る」、という違いを押さえた上で、問題識別→原因分析→対策計画→実施→有効性確認の5ステップを確実に回すことが基本です。

原因分析では5M1Eフレームワークを活用してなぜなぜ分析の網羅性を高め、「人のミス」で分析を止めずにシステム・仕組みレベルの根本原因を特定することが、ISO審査やFDA査察で評価される実効的なCAPAにつながります。

ISO 9001(条項10.2)・ISO 13485(8.5.2/8.5.3)・FDA(21 CFR 820.100)のいずれの規格においても、記録の文書化・有効性確認・管理者へのフィードバックが共通して求められています。これらを確実に実施するためには、担当者・期限・ステータスを可視化できるデジタル管理の仕組みが有効です。

CAPAを「審査のための書類作成作業」から「組織の品質を実際に向上させるサイクル」へと転換させることが、継続的改善の本来の姿です。WhyTrace Plus のAI根本原因分析機能と対策管理機能を組み合わせることで、CAPAプロセスの実効性と記録管理の効率を同時に高めることができます。


よくある質問(FAQ)

Q1. CAPAはすべての不適合に実施しなければなりませんか?

ISO 9001の条項10.2.1では、是正処置の必要性を「不適合の影響度に照らして評価する」と規定されています。軽微な不適合で是正処置が不要と判断することも認められますが、「評価した」という記録は残す必要があります。一方、FDA規制下の医療機器メーカーでは、重大性・リスクに応じた調査が義務づけられており、判断の根拠を記録に残すことが重要です。

Q2. 是正処置と「修正」はどう違いますか?

修正(Correction)は不良品の廃棄・手直しなど、発生した問題への直接的な対処です。是正処置(Corrective Action)は根本原因を特定して除去し、再発を防ぐための処置です。ISO 9001の条項10.2は是正処置(根本原因対処)を求めており、修正(直接対処)だけでは要求事項を満たしません。

Q3. 有効性確認はいつ、どのように実施すればよいですか?

有効性確認の時期は是正処置の内容によって異なります。手順書を改訂した場合は改訂後の運用状況の確認、教育訓練を実施した場合は実務での定着確認が必要です。ISO規格に具体的な期間の定めはありませんが、組織として合理的な基準を設定し、その基準と確認結果を記録することが審査・査察対応のポイントです。

Q4. ISO 9001では「予防処置」の章がなくなったと聞きました。予防処置はもう不要ですか?

予防処置という独立した要求事項はISO 9001:2015で廃止されましたが、概念そのものがなくなったわけではありません。「リスクに基づく考え方」として規格全体に組み込まれ、潜在的な問題を事前に特定して対処することは引き続き求められています。ISO 13485(医療機器)では予防処置(8.5.3)が独立した条項として残っており、要求事項に違いがあります。

Q5. CAPAをデジタル化する際に注意すべき点はありますか?

記録の完全性と変更履歴の保持が最重要です。ISO/FDA審査では「誰が・いつ・何を記録したか」の証跡が確認されます。デジタルツールを選定する際は、変更履歴の保持、電子署名・承認フローの有無、監査用レポートの出力機能を確認することをおすすめします。また、紙運用からの移行時は旧記録の保管期間と参照方法についても方針を整理しておくとよいでしょう。


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