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法規・コンプライアンス2026/7/612分で読めます

労災報告書の書き方テンプレート|様式23号の記入例と提出手順

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労働災害が起きたとき、現場では応急対応や原因究明に追われ、行政への報告は後回しになりがちである。だが労働者死傷病報告(労災報告書)の提出は労働安全衛生法に基づく義務であり、出し忘れや虚偽記載は「労災かくし」として送検対象にもなる。しかも2025年1月からは電子申請が原則義務化され、従来の様式と提出ルートが大きく変わった。

「どの様式を使えばいいのか」「いつまでに出すのか」「何を書けばいいのか」——この3点で手が止まる担当者は多い。本記事では、休業4日以上の様式23号を中心に、記入例・提出手順・電子申請の流れを整理し、初めての担当者でも迷わず提出できるテンプレートとして解説する。


1. 労災報告書(労働者死傷病報告)とは

労働者死傷病報告とは、労働災害などにより労働者が死亡または休業した際に、事業者が労働基準監督署へ提出する報告書である。労働安全衛生法第100条および労働安全衛生規則第97条に基づく法定の義務であり、一般に「労災報告書」と通称される。

注意したいのは、この報告は労災保険の給付申請(労災請求)とは別物だという点である。労災保険の請求は被災労働者本人が労働基準監督署へ行う手続きだが、労働者死傷病報告は事業者が行政へ「災害が発生した事実」を届け出るための報告である。両者は目的も提出者も異なる。

報告された情報は、国の労働災害統計の基礎データとなり、再発防止策の立案や安全衛生行政に活用される。つまり個社の手続きであると同時に、社会全体の安全水準を底上げする仕組みの一部でもある。

項目 労働者死傷病報告(労災報告書) 労災保険給付の請求
提出者 事業者 被災労働者本人(または遺族)
目的 災害発生の事実報告・統計 治療費・休業補償などの給付
根拠 労働安全衛生法・安衛則 労働者災害補償保険法
提出先 労働基準監督署 労働基準監督署

労災対応で本当に時間をかけるべきは、書類作成ではなく「なぜ起きたか」の原因究明である。WhyTrace PlusならAIがなぜなぜ分析を支援し、再発防止策まで一気通貫で記録できる。


2. 様式23号と様式24号の違い|休業4日以上か未満か

様式23号と様式24号の違いとは、被災労働者の休業日数によって使い分ける2種類の様式である。境目は「休業4日」であり、ここを誤ると提出期限も提出方法も変わってしまう。

具体的には、被災労働者の休業が4日以上に及ぶ場合(または死亡した場合)は様式第23号を、休業が4日未満の場合は様式第24号を提出する(参考:労働者死傷病報告書とは?/社労士鈴木事務所、2026年時点)。

区分 使用様式 対象となる災害 提出期限
休業4日以上・死亡 様式第23号 労災で4日以上の休業、または死亡 遅滞なく(おおむね1〜2週間以内)
休業4日未満 様式第24号 労災で1〜3日の休業 四半期ごとにまとめて提出

「休業4日」のカウント方法

休業日数のカウントには注意点がある。休業初日は、被災当日ではなく原則として翌日から数える運用が一般的だが、所定労働時間中に被災して以後就労できなかった場合は当日を含める。土日祝などの所定休日も休業日数に含めてカウントするのが原則である。

4日未満が後から4日以上になった場合

当初は軽傷で様式24号の対象と判断していたものが、容態悪化により休業が4日以上に延びることがある。この場合、4日以上に達した時点で速やかに様式23号で報告し直す必要がある。「最初に24号で出したから」と放置すると報告漏れになるため、休業の継続状況は追跡しておきたい。


3. 様式23号の記入項目と記入例

様式23号の記入とは、災害の発生状況を行政が把握できるよう、事業場・被災者・災害の各情報を所定欄に記載する作業である。2025年1月の改正で報告事項が見直され、災害発生状況をより構造的に記載する形式へと変わった。

主な記入項目は次のとおりである。

項目区分 記入内容
事業の種類 日本標準産業分類に基づく業種
事業場の名称・所在地 法人名・事業場名・住所・電話番号
労働者数 事業場の常時使用労働者数
被災労働者の情報 氏名・性別・年齢・職種・経験年数
傷病の部位・性質 負傷した部位、傷病名
休業見込み日数 災害による休業日数(見込み)
災害発生日時・場所 いつ・どこで発生したか
災害発生状況・原因 どのような作業中に、どんな物が、どう関与して被災したか

災害発生状況の書き方が最重要

記入欄のなかで最も重視されるのが「災害発生状況及び原因」である。ここは曖昧な書き方では差し戻される。次の4要素を押さえて、第三者が読んでも状況を再現できるレベルで書く。

  • どのような場所で(例:第2工場の組立ライン横の通路で)
  • どのような作業をしているときに(例:台車で部品を運搬中に)
  • どのような物が・どのような状態で(例:床面に漏れていた油で)
  • どうして災害が発生したか(例:足を滑らせて転倒し、左手首を負傷した)

「不注意だった」「本人の確認不足」といった人為的要因だけで締めくくる書き方は避けたい。なぜその状況が生じたのか、設備・手順・環境の側に踏み込むことで、再発防止につながる報告になる。

悪い記入例と良い記入例

記入内容
悪い例 「作業中に転倒し負傷した」
良い例 「第2工場組立ライン横の通路で、台車により部品を運搬中、床面に漏れていた切削油で足を滑らせ転倒。床に左手をついた際に左手首を骨折した」

良い例のように「場所・作業・起因物・経過」を一文で再現できると、行政側の確認もスムーズになり、自社の原因分析にもそのまま使える。


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4. 提出期限と提出先|休業4日以上と4日未満で異なる

労災報告書の提出期限とは、災害の重さによって定められた行政への報告タイミングである。様式23号と様式24号で期限の考え方がまったく異なる。

様式23号(休業4日以上・死亡)の提出期限

休業4日以上または死亡の場合は「遅滞なく」提出する。実務上は災害発生からおおむね1〜2週間以内が目安とされる(参考:厚生労働省 労働者死傷病報告の電子申請義務化、2026年時点)。死亡災害の場合は、報告書とは別に、まず労働基準監督署への速やかな連絡(電話など)が求められる。

様式24号(休業4日未満)の提出期限

休業4日未満の場合は、その都度ではなく四半期ごとにまとめて報告する。期間と提出期限は次のとおりである。

災害発生の期間 提出期限
1月〜3月 4月末日まで
4月〜6月 7月末日まで
7月〜9月 10月末日まで
10月〜12月 翌年1月末日まで

四半期分をまとめて出せるため負担は軽いが、件数が複数になると記入漏れが起きやすい。発生のつど社内の災害台帳に記録し、四半期末にまとめて転記する運用にしておくと取りこぼしを防げる。

提出先

提出先はいずれも、災害が発生した事業場を管轄する労働基準監督署である。本社所在地ではなく、災害が起きた現場を管轄する署に提出する点に注意したい。電子申請の場合は管轄署を選択する形になる。


5. 電子申請の手順|2025年義務化への対応

労災報告書の電子申請とは、紙の様式に代えてオンラインで労働者死傷病報告を提出する方式である。2025年(令和7年)1月1日から、報告事項の改正とあわせて電子申請が原則義務化された(参考:厚生労働省 労働者死傷病報告の電子申請義務化、2026年時点)。

電子申請には主に2つのルートがある。

  1. e-Gov電子申請:政府の電子申請総合窓口から提出する方法。GビズIDなどのアカウントを利用する。
  2. 厚生労働省の入力支援サービス:「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」で帳票を作成する方法。

電子申請の基本的な流れ

電子申請は、おおむね次の手順で進める。

  • アカウント(GビズID等)を準備する
  • 申請システムで様式23号(または24号)を選択する
  • 事業場情報・被災者情報・災害発生状況を入力する
  • 内容を確認し、管轄の労働基準監督署を選択して送信する
  • 受付控え(到達確認)を保存する

入力支援サービスでは、項目に沿って入力していけば自動で帳票が整うため、手書きより記入漏れが起きにくい。送信後の受付控えは、提出済みの証跡として必ず保存しておく。

書面提出が認められる例外

パソコンを所持していないなど、電子申請が困難な事情がある場合は、当分の間、書面による報告も認められている(参考:厚生労働省 労働者死傷病報告の電子申請義務化、2026年時点)。ただしこれはあくまで例外的な取り扱いであり、原則は電子申請である点を踏まえておきたい。


6. 提出を怠った場合のリスク|労災かくしと罰則

労災報告の不提出とは、義務である労働者死傷病報告を出さない、あるいは虚偽の内容で報告する行為を指す。これは俗に「労災かくし」と呼ばれ、労働安全衛生法違反として重く扱われる。

労災かくしに該当する典型的なパターンは次のとおりである。

  • 報告自体をしない(出し忘れ・意図的な隠蔽)
  • 休業を伴う労災を「労災ではない」として処理する
  • 災害発生日や状況を実際と異なる内容で記載する
  • 本来は会社の労災を、被災者個人の健康保険で治療させる

労災かくしは、労働安全衛生法第100条違反として、50万円以下の罰金が定められている。悪質な場合は事業者・担当者が送検される事例もある。「報告すると元請けに迷惑がかかる」「労災件数を増やしたくない」といった理由での不提出は、結果的にはるかに大きなリスクを招く。

報告は罰則回避のためだけに行うものではない。報告と原因分析をセットで運用することで、同種災害の再発を防ぎ、現場の安全文化を育てる起点になる。報告を「義務的な事務」から「再発防止のスタート地点」へと位置づけ直すことが重要である。

なお、ヒヤリハット段階での報告・分析を仕組み化しておくと、そもそも休業災害に至る前に芽を摘める。報告のハードルを下げる工夫は、ヒヤリハット活動の事例集も参考になる。労災の原因究明をどう深めるかは、なぜなぜ分析の始め方とあわせて押さえておきたい。


よくある質問(FAQ)

Q. 休業4日以上か4日未満かは、いつ判断すればよいですか?

被災後、医師の診断や本人の就労状況をもとに休業見込み日数で判断する。当初4日未満と見込んで様式24号の対象としていても、後に休業が4日以上へ延びた場合は、その時点で速やかに様式23号として報告し直す必要がある。

Q. 派遣労働者が被災した場合、どちらが報告しますか?

派遣労働者が被災した場合は、派遣元と派遣先の双方が労働者死傷病報告を提出する義務を負う。派遣先は災害発生状況を把握できる立場にあるため、派遣元へ写しを送付するなど両者で情報を共有して報告する運用が求められる。

Q. 通勤災害でも労働者死傷病報告は必要ですか?

労働者死傷病報告は業務災害(業務に起因する災害)を対象としており、通勤途上の災害である通勤災害は原則として対象外である。ただし通勤災害でも労災保険の給付請求は別途可能なので、報告義務と給付請求を切り分けて考える必要がある。

Q. 電子申請が義務化されたら、紙での提出は一切できませんか?

原則は電子申請だが、パソコンを所持していないなど電子申請が困難な事情がある場合は、当分の間、書面での報告も認められている。ただし例外的な取り扱いであり、可能な限り電子申請へ移行することが望ましい。

Q. 報告書を提出すると、行政から調査や指導が入りますか?

報告したこと自体が直ちに調査につながるわけではない。死亡災害や重大災害では労働基準監督署の調査が入ることがあるが、通常の休業災害では報告内容の確認にとどまるケースが多い。調査を恐れて報告しない方が、労災かくしとしてはるかに重いリスクを負う。


まとめ

労災報告書(労働者死傷病報告)は、労働安全衛生法に基づく事業者の義務であり、出し忘れや虚偽記載は労災かくしとして罰則の対象になる。本記事の要点を整理する。

  • 様式の使い分け:休業4日以上・死亡は様式23号、休業4日未満は様式24号
  • 提出期限:様式23号は「遅滞なく」(おおむね1〜2週間)、様式24号は四半期ごとにまとめて翌月末まで
  • 記入の核心:「災害発生状況及び原因」を場所・作業・起因物・経過の4要素で再現できるレベルに書く
  • 電子申請:2025年1月から原則義務化。困難な場合のみ当分の間は書面も可
  • 不提出のリスク:労災かくしは50万円以下の罰金、送検の事例もある

報告書を「埋めて終わり」にせず、災害発生状況の記載をそのまま原因分析へつなげることで、同じ災害の再発を防げる。災害事象のなぜなぜ分析とツリー図による可視化、対策の記録までを一体で運用したい場合は、WhyTrace Plusをぜひお試しいただきたい。報告と再発防止を分断せず、ひとつのワークフローで回せる。


Sources:


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國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|AIコンサルタント|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。AIコンサルタントとして、企業のAI・生成AI活用や現場DX導入の支援も行っています。

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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